交通事故に遭ったときに必ずするべき9つの対応
交通事故は、こちらがどれだけ注意していても、相手の過失によって巻き込まれてしまうことがあります。
また、交通事故に遭ったときには、突然の出来事に、気が動転して冷静な対応ができない場合も少なくないようです。
交通事故にあったときには、「初期対応」がとても重要です。事故の状況を正しく把握し、被害を最小限に食い止め、適切な損害賠償を確保するためには、事故直後に正しい対応をとる必要があります。
そこで、今回は、交通事故にあったときに必ずすべき9つの対応について解説します。
「事故に遭ったら何をすべきか」ということを正しく知っていれば、万が一の時に落ち着いて対応できる可能性も高くなります。
このコラムの目次
1.道路交通法で定められていること
交通事故を起こした車両に搭乗していた人(およぼ他の乗務員)には、道路交通法72条によって、次の義務が課せられています。
- 直ちに車両の運転を停止すること
- 負傷者を救護すること
- 道路における危険を防止するために必要な措置を講じること
- 警察への報告
これらの義務に違反したときには、違反の内容によって次の刑罰が科せられることがあります。
- 救護義務違反:5年以下の懲役または50万円以下の罰金(道路交通法117条1項)
- 加害者の救護義務違反:10年以下の懲役または100万円以下の罰金(道路交通法117条2項)
- 停止違反・防止措置違反:1年以下の懲役または10万円以下の罰金(道路交通法117条の5第1号)
- 警察への報告義務違反:3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金(道路交通法119条1項10号)
- 警察からの指示に背いた場合:5万円以下の罰金(道路交通法120条11号の2)
2.交通事故が起きたときに必ずすべき8つの対応
実際に交通事故が起きたときには、「落ち着いて」対処することが何よりも大切です。
以下では、交通事故が起きたときに必ず取るべき対応について、事故発生からの時系列で解説していきます。
実際に事故に遭ったときに間違えた対応をしないためには、「対処すべき項目を記載したメモ」を社内やスマホ・携帯に保管しておくのも、有効な方法でしょう。
(1) 安全な場所に車を停止させる
交通事故が起きたときには、直ちに自動車を安全な場所に停止させましょう。
道路交通法に義務づけられているからというのではなく、自らの安全と「二次事故」を防止するためです。
特に、高速道路や主要幹線道路の交通事故では、事故車両の停止位置に問題があったために二次事故が起きることがしばしばあります。
また、交通量が少なくても、見通しの悪い箇所での事故の際にも、事故車両の停止位置に注意する必要があります。
言うまでもないことですが、事故を認知したにもかかわらず何もせずにそのまま立ち去るのは絶対にいけません。
(2) スマホ・携帯を準備する
車両を安全な位置に停止させることができたら、スマホ・携帯電話を取りだしてすぐに使えるように準備してから、安全を確認して車外に出ます。
スマホ・携帯は、「警察・消防・家族への連絡手段」、「事故状況や加害者情報の記録」、「保険会社への連絡(スマホアプリなど)」と交通事故対応の多くに利用することができます。
(3) 危険を防止するための措置を講じる
交通事故現場では二次事故が生じることも珍しくありません。特に、高速道路、国道などの幹線道路では、交通量も多く、車両の走行速度も速いため、注意が必要です。
事故車両を安全な場所で停止させた後に、「三角表示板」」や「発煙筒」で後続車に事故があることを知らせることが大切です。
(4) 負傷者の救護
負傷者がいるときには、必要な救護措置を行います。
道路交通法では、加害者・被害者の区別を問わずに車両の運転手(と乗務員)に課せられています。
しかし、頭部や頸部に受傷があるときには、素人判断で負傷者を動かすと逆に重篤化させる危険もあります。
負傷者がいるときには、直ちに119番通報をして上で、消防の指示にしたがって対処するようにしましょう。
(5) 加害者の確認・記録
交通事故の相手の車両を確認し、車種・車体の色・ナンバーといった車両の情報をきちんと記録します。携帯・スマホのカメラ機能を使って撮影しておくのも良いでしょう。
また、事故の相手方と直接接触できたときには、相手の連絡先をきちんと確認しておきます。
特に、自分が被害者であるときには、加害者に運転免許証を提示してもらい、「コピーを取る」、「カメラで撮影しておく」ことが大切です。
さらに、加害者が加入している自賠責保険・任意保険の保険会社名・保険証書番号も控えておくと安心です。
自分が被害者であるときには、加害者の勤務先の名刺や携帯番号の日中の連絡先を聞き出しておくことも、後の示談交渉をスムーズに進めるために大切です。
(6) 警察へ報告
交通事故を起こした車両の運転手などには、交通事故を警察に報告する義務があります。警察へ報告すべき内容は、次の4点です。
- 交通事故が発生した日時および場所
- 交通事故における被害の状況(死傷者の数・負傷の程度、損壊した物・損壊の程度)
- 交通事故に係る車両等の積載物
- 交通事故について講じた措置
しかし、実際には、軽微な事故では、「急いでいる」、「保険を使わずに賠償する」といったことを理由に、警察に報告せずに示談することを提案される場合もあるようです。
警察への報告を怠ると「事故証明書」が発行されません。事故証明書がなければ、保険会社に請求することが難しくなるだけでなく、相手方との損害賠償がこじれて訴訟になった際にも不利益が生じる場合もあります。
交通事故の相手方は見ず知らずの他人であることがほとんどです。万が一の場合に備えるためにも必ず警察に報告しましょう。
(7) 事故状況の確認と記録
110番通報から警察官の到着には時間がかかります。その間に、事故状況の確認・整理と記録をしておきます。
警察官到着後の事情聴取の際に、曖昧な記憶に基づいて供述すると過失割合で不利となることもあります。
事故発生の経緯(車両の移動経路など)、被害状況をメモやカメラでの撮影などで記録しておくと、後に役立つこともあるでしょう。
また、重大事故の場合には、周囲に目撃者がいないかどうかを確認し、目撃者がいれば、連絡先を聞き出しておくことも重要です。
損害賠償請求が訴訟までもつれたときには、証人となってもらうことをお願いする可能性があるためです。
(8) 保険会社への連絡
警察への報告を済ませ、事故の相手方の情報を入手した後に、自分が加入している保険会社に事故の報告をします。
事故の加害者となった場合は当然ですが、「自分は被害者」と思っているときでも保険会社に連絡しておいた方がよいでしょう。
交通事故には双方に過失がある場合も少なくなく、無過失事故(完全に被害者)のケースでも、ロードサービスや弁護士費用特約などを利用できる場合があるからです。
(9) 人身事故に遭ったときには、必ず医師の診察を受ける
交通事故で何かしらの受傷があったときには、必ず医師の診察を受けましょう。
目に見える外傷がなく軽い打撲に過ぎないと思っているときでも、脳や骨などにダメージがあることも少なくありません。
交通事故後すぐに必要な診察を受けていないときには、受傷による損害賠償請求で不利になることもあります。
「ちょっと打っただけだから大丈夫」と自分で判断してはいけません。
3.交通事故が起きたときにやってはいけないこと
交通事故でやってはいけないことの基本は、上で解説したことを怠ることです。
- 負傷者がいるのに119番通報しないこと
- 事故を警察に届け出ないこと
- 相手方の氏名や連絡先を確認しないこと
- 保険会社に連絡しないこと
これらのことがあれば、刑事責任問われる可能性があるだけでなく、事故後の損害賠償交渉でも不利益を受けることがあります。
また、特に被害事故のときには、次の2点にも注意が必要です。
- 保険会社を通さずに相手方と直接示談をすること
- すぐに示談に応じること
- 警察に不正確・曖昧な供述をすること
(1) 直接の示談は危険な場合が多い
物損のみの軽微な事故の場合には、「保険を使わずに処理したい」と相手方から提案される場合もあると思います。
しかし、交通事故の相手方は、「はじめて会った人」であることがほとんどです。したがって、相手の経済状況などは全くわかりません。
また、事故のときには軽微な傷やへこみだけにみえる場合でも、修理の見積もりを出してみたら高額な修理代が必要ということもありえます。
特に、ハイブリッド車などの場合には、精密機器を多く使っているため、ちょっとした修理でも高額な費用がかかることが少なくありません。
被害の程度を問わず、まずは保険会社から連絡してもらうことを徹底することが大切でしょう。
(2) すぐに示談に応じてはいけない
交通事故の示談交渉は、被害者にとっても煩わしいと感じるものです。そのため、打撲程度の受傷に過ぎないときには、「軽傷だから大丈夫」と早期に示談に応じてしまう人も少なくありません。
しかし、むち打ち症などのように、事故後すぐには症状があらわれないケガもあります。
交通時によってケガを負ったときには、治療が終了してから(症状固定後)、示談交渉を行うことが基本です。
また、後遺障害が残る可能性の高い重傷を負ったときには、早期に弁護士に相談・依頼することも大切です。
適切な後遺障害等級の認定をうけるために、治療段階から弁護士のサポートを受けていた方が良い場合も少なくありません。
(3) 警察に曖昧・不正確な供述をする
交通事故が起きたときには、警察による実況見分が行われます。警察が作成する実況見分調書は、交通事故の過失割合の認定などに大きな影響を与えます。
警察官による実況見分の際に、不正確な情報、曖昧な情報を伝えてしまうと、実況見分調書に示される内容が、実際の事故とは異なる内容になる可能性があります。
また、供述を聴き取った警察官の理解不足や誤解で、伝えたことが正しく記載されていない場合もあるでしょう。
一度作成された実況見分調書を後に訂正・修正することは簡単ではありません。相手方と認識が異なる点や、納得のいかない点は、明確に留保するなど毅然とした対応をとることも大切です。
「面倒だから」、「早く終わらせたいから」と不十分な対応をすれば、後に大きな不利益となって返ってくることもあるので注意しましょう。
4.まとめ
交通事故に遭ったときには誰でも慌ててしまうものです。それだけに、間違えずに対応するためには日頃の備えが大切といえます。
事故時にすべき対応をきちんと理解しておく、必ずすべき対応をリスト化したメモを社内に保管しておくといった事前の準備は非常に有用です。
万が一、交通事故に遭ってお困りのこと、ご不安なことがあるときには、弁護士に相談してみるのも方法のひとつです。
泉総合法律事務所であれば、交通事故のプロである弁護士が責任もってサポートさせていただきます。
初回のご相談は無料となっておりますので、交通事故の被害者になってしまったという方は、ぜひ一度泉総合法律事務所 支店にご連絡ください。
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