非接触事故とは?過失割合はどうなるのか
交通事故の多くは、ハンドル操作のミスによる衝突や、追突などの接触によって起こります。
しかし、「前を走っているバイクを後方から来たトラックが追い抜こうとしたときに、トラックがバイクに近寄りすぎて、接触はしなかったけれど風圧によってバイクが転倒してしまう」というケースがあります。
また、「先行するトラックが突然進路を変えたので、後方の原付バイクが急ブレーキをかけてバランスを崩し転倒してしまう」ということもあります。
このような非接触による交通事故の場合、加害者側に対して損害賠償請求をすることができるのでしょうか?
このコラムの目次
1.非接触事故の因果関係
結論から言うと、「加害者側の過失ある行為によって、被害者側が損害を負った」といえるのであれば、非接触事故の場合でも損害賠償請求をすることができます。
ただし、非接触事故の場合には、例えば「本当にトラックの運転手のせいでバイクが転倒したのか」「バイクが勝手に転んだのか」「別の原因で転んだのではないか」などという「因果関係」が争われることが多くなります。
例えば、以下のような判例があります。
大阪地方裁判所平成28年9月2日判決
被告の中型貨物自動車が、片側二車線の大阪環状線の第二車線から第一車線に進路変更したところ、第一車線を直進してきた原告の自動二輪車が急ブレーキをかけ転倒した事故。
この事案では、被告は、原告が被告車を発見した時点で安全な車間時間(2秒)に対応する距離があったため、被告車の進路変更と原告車の転倒には因果関係がないと主張していました。
つまり、被告は、計算上は安全な進路変更が可能な状況だったので、原告が適切にブレーキをかけていれば、被告との接触を回避することが物理的に可能であり、原告が転倒することもなかったのだから、被告の進路変更と原告の転倒との間には因果関係はないと主張したのです。
これに対して、裁判所は、「因果関係の判断は,周囲の道路状況や運転手の状況等を考慮した上で個別具体的にされるものであって,安全な車間時間からただちに判断することはできない」としました。
そして、当時の原告の時間的・空間的・心理的に切迫した状況を考慮すれば、被告の進路変更と原告の転倒との間には因果関係があると判断しています。
京都地方裁判所平成25年4月23日判決
被告運転の車両が左方の路外駐車場に進入しようとして左の方向指示器を出して左方に寄ったところ、上記車両の左後方を走行していた原告運転の原動機付自転車が転倒した事故。
裁判所は「被告は,(中略)左後方から走行してくる二輪車等の有無及びその距離関係等を確認した上,追走する二輪車等に急な進路変更や急制動等を強いることがないようにすべき注意義務があるのにこれを怠り,追走する原告二輪車の位置を十分確認せず,しかも,左の方向指示器を出すのとほとんど間を置かずに左に進路変更した過失により,原告に衝突の危険を感じさせ,かつ驚愕させて運転操作を誤らせ,転倒させた過失があるというべきである。」として、損害賠償請求を認めました。
また、被告が「原告運転の二輪車は道路に落ちていた空き缶を踏んでバランスを崩して転倒したのであり、被告の左折とは因果関係がない」と主張したものの、裁判所は状況の不自然さからその主張を採用せず「分岐点に差し掛かった被告車が、急に左折の方向指示器を出して左折を開始したため、被告車との接触を回避しようとし原告が急制動し、転倒した非接触事故」と認定した事例もあります(大阪地方裁判所平成26年3月11日)。
なお、被害者が歩行者である場合にも、非接触事故の因果関係は成立し得ます。
水戸地方裁判所平成29年11月30日判決では、右折先の横断歩道上の歩行者(70歳)を見落として、歩行者に自動車が(低速で)接近したところ、歩行者が狼狽して転倒し、高次脳機能障害等の障害を負ったという事案について、裁判所は因果関係を認めました。
このように、非接触事故では、加害者の行為が被害者の転倒の原因かどうかということがかなり強く争われる傾向があります。
2.非接触事故の過失割合
(1) 過失割合の決まり方
トラックの行為とバイクの転倒との間に因果関係が認められると、次は過失割合の問題になります。
過失割合は、多くの事件の場合、当事者の合意によって決まります(和解ができない場合、裁判となります)。
接触事故でも非接触事故でも、個別具体的にそれぞれの事故態様に応じて過失割合が決められるということに違いはありません。
過失割合を決める要素には、被害者の事故回避措置の適切性、加害者による被害者の走行妨害の程度、加害者の判断の不適切性の程度、等があります。
つまり、「被害者が落ち着いて対処していれば物理的に危険はなかった」「被害者の過剰反応も転倒の原因である」という認定がなされれば、被害者側の過失割合は大きくなります。
また、「被害者がもっと早くに気づいていれば回避できた」「速度を守って入れば回避できた」「車間距離を守っていれば回避できた」というような場合であれば、これも被害者の過失が大きく取られることもあります。
(2) 非接触事故の過失割合に関する判例
大阪地方裁判所平成28年9月2日
被告の中型貨物自動車が、片側二車線の大阪環状線の第二車線から第一車線に進路変更したところ、第一車線を直進してきた原告の自動二輪車が急ブレーキをかけ転倒した事故。
裁判所は、原告(二輪車)と被告(中型貨物自動車)の過失割合を5:5と認定しました。
被告には、左後方の安全確認を怠った過失が認められ、原告には、前方不注視の過失と速度超過(スピード違反)の過失が認められています。
大阪地方裁判所平成26年3月11日
東行片側1車線の左側に分岐点が生じる地点で、原告運転の二輪車が先行する被告運転の自動車を追行する形で走行し、被告車との車間を詰めていたところ、分岐点に差し掛かった被告車が、急に左折の方向指示器を出して左折を開始したため、被告車との接触を回避しようとし原告が急制動し、転倒した非接触事故。
裁判所は、原告(二輪車)と被告(自動車)との過失割合を2:8と判断しました。
裁判所は、被告には、後方の安全を確認し、合図を出した上で進路変更すべき義務を怠った過失があると認定しましたが、原告にも、被告車両との車間を保持し、その動静に注意して進行すべき義務があるところ、これを怠った過失があるという判断になっています。
3.非接触事故に遭ったらすべきこと
非接触事故は交通事故の一類型ですので、非接触事故に遭ったときにするべきことは、基本的には交通事故の発生のときにするべきことと同じです。
[参考記事]
交通事故に遭ったときに必ずするべき9つの対応
道路交通法上、被害者・加害者のどちらにも警察に報告する義務がありますし、怪我人がいるならば救助する(救急車を呼ぶ)義務があります。
この他にも、周囲に目撃者がいた場合には、警察が来るまでその場にとどまってもらうようにしましょう。
自分の保険会社に連絡をする必要もあります。
ただ、非接触事故の場合は、相手には衝撃がないため、相手はこちらの転倒に気づかないまま走り去ってしまうというケースがあります。
そのようなときには、なるべく相手の自動車のナンバーや種類・特徴を覚えて、警察が駆け付けたときにすぐに伝えられるようにする必要があります。
その後の警察の捜査においては、実況見分や参考人聴取において、事故発生時の状況について、自分の言い分をきちんと述べておくようにしましょう。
因果関係の有無及び過失割合について争われた場合、当事者が事故直後に述べていた証言は、事故状況の立証において非常に重要になります。
4.非接触事故で保険会社と争いになったら弁護士へ相談を
非接触事故の因果関係の有無は、難しい争いになります。
「そもそも因果関係がない」と相手方保険会社から主張されて、納得がいかないこともあるでしょう。
また、保険会社から提示された過失割合や損害賠償の金額に納得がいかない場合にも、早めに弁護士に相談するのがおすすめです。
藤沢市にお住まいの方、お勤めの方で、交通事故の被害に遭ってしまいお困りの方は、お早めに泉総合法律事務所藤沢支店へご相談ください。
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