奨学金は個人再生で解決できるのか?|保証人への影響とは
大学(昼間部)に通う学生のうち、実に約30%の学生が奨学金を受給しているそうです(全国大学生活協同組合連合会調べ、2018年)。
奨学金には2つのタイプがあり、貸し付けてもらった奨学金を返還する必要がある「貸与型」と、返還する必要のない「給付型」に分かれます。
貸与型の奨学金は、利息が付くタイプと付かないタイプがありますが、 後から返済しなければならないという意味でどちらも「借金」です。
では、この貸与型の奨学金を返せなくなった場合、どうなるのでしょうか。
借金の解決方法である債務整理の中でも減額率が大きな「個人再生」は、奨学金の滞納でも対象になるのでしょうか。
また、両親などの保証人には、どのような影響が生じるのでしょうか。
このコラムの目次
1.奨学金は個人再生の対象になる
まず、個人再生手続きについて簡単に確認します。
個人再生は、借金を元本含め大幅にカットして、原則3年間で分割返済する再生計画を裁判所に認めてもらう手続きです。
そして、再生計画通りに返済できた場合には、残りの借金は免除されます。
結論から言えば、奨学金もこの個人再生の対象となります。
もっとも知名度のある奨学金といえば「日本学生支援機構」ですが、この他にも、都道府県や市町村、あるいは民間団体などが奨学金事業を行っている場合もあります。
どの団体の奨学金であっても、「貸与型」である限り、将来的に返済が必要な「借金」であることに変わりないので、個人再生の対象となります。
2.奨学金を個人再生する場合の注意点
ここからは、奨学金を個人再生する場合にネックとなる「保証人」の問題について詳しく解説します。
なお、「保証人」と「連帯保証人」は厳密には異なるのですが、ここから先はまとめて「保証人」と表記します。
(1) 奨学金の保証制度
奨学金を借りるのは親ではなく、進学する本人です。
つまり、奨学金を申し込むのは、高校進学あるいは大学進学の時点で未成年(就業もしていない人)であるケースがほとんどでしょう。
そこで、多くの奨学金では「保証」が必要とされます。
保証の方式として「人的保証」と「機関保証」があります。
「人的保証」とは、要するに保証人や連帯保証人のことであり、「機関保証」とは、保証を事業とする会社(保証会社)に保証してもらう方式です。
個人再生を申し立てると、人的保証となっているケースで、保証人に迷惑をかけてしまうことになります。
(2) 保証人への影響
奨学金を借りた本人が個人再生を申し立てた場合、返済の請求は保証人に行ってしまいます。
個人再生手続きは、申立人の債務をカットする効果がありますが、保証人にまではこの効果が及びません。
そのため、奨学金を貸与した側(たとえば日本学生支援機構など)は、返済してもらえない分を保証人に請求することができます。
(しかも、通常は残額の一括返済を求めます。)
具体的な実例をもとに考えてみましょう。
たとえば、日本学生支援機構から貸与された奨学金が200万円、その他にクレジットカードやサラ金のローンが300万円、合計して500万円の債務があるとします。
この事例で、借金を「100万円」(債務合計額の1/5)まで圧縮し、それを3年間で分割返済する計画が認められたとします。
(無事に3年間の分割返済が終了すれば、残り5分の4の借金については返済が免除されます。)
日本学生支援機構の奨学金だけで考えると、再生計画に基づいて40万円(200万円の1/5)を支払うと、残りの160万円は返済が免除されます。
しかし、これはあくまで個人再生を申し立てた「本人」限りの話であって、保証人は引き続き、残りの160万円を支払う義務が存続するのです。
3.保証人ができる対応策
保証人が両親や親戚などの場合には、個人再生をすることを秘密にしたい、保証人に迷惑をかけたくない、と思うのが通常かと思います。
しかし、残念ながら、保証人に内緒で個人再生を申し立てることはできません。
個人再生では、特定の債権者を手続きから外すことができません(債権者平等の原則)。
また、仮に内緒で個人再生を申し立てても、裁判所から通知が届くので、遅かれ早かれ保証人には知られてしまいます。
では、保証人にはどのような対応策を取ってもらうべきなのでしょうか。
(1) 分割払いの交渉を行う
先ほど説明したとおり、奨学金を借りた本人が債務整理を行った場合、保証人は奨学金事業者から一括請求を求められます。
ただし、分割返済の交渉は可能です。
実際に、日本学生支援機構は原則として保証人からの分割返済の申し入れに応じてくれるようです。
一括請求されてしまった保証人の方は、慌てて借入などをして返済するのではなく、一度分割払いの交渉をしてみることをお勧めします。
(2) 保証人も個人再生・自己破産する
一括はもちろん、分割払いでも支払いきれそうにない、という場合には、保証人も個人再生や自己破産などの債務整理を行うことが考えられます。
この場合、奨学金の主債務者が個人再生を検討する時点で、保証人の方も一緒に弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
早めに対策を考えることで、最も悪影響が少ない解決方法を弁護士がご提案することが可能になるでしょう。
主債務者の方も、保証人への影響は個人再生では避けられませんので、保証人へは予め相談の上で個人再生を選択するべきと言えます。
4.奨学金でお困りの方は泉総合法律事務所藤沢支店へ
「どうしても保証人に迷惑をかけられない」「絶対に知られたくない」からといって現状の返済を継続していても、そう遠くないうちに行き詰ってしまうおそれが大きいです。
個人再生や自己破産、任意整理について分からないことや困っていることがあれば、まずは弁護士に相談してみることをお勧めします。
泉総合法律事務所では、相談料無料で債務整理に精通した弁護士が責任もってサポートいたします。
奨学金でお困りの方は、よろしければ保証人の方と一緒に、泉総合法律事務所藤沢支店への無料相談をぜひご利用ください。
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