債務整理

個人再生をしても養育費や慰謝料は減額できない?

個人再生において、養育費や慰謝料はその支払いを免除されるのか?

個人再生手続をすれば、裁判所に借金などの金銭支払義務、つまり「債務」を大きく減らして貰った上で、3年間(最長5年間)の分割払いにより返済することが出来るようになります。

ところが、例外的に、個人再生手続によっても支払負担を減らせない債務があります。
それは、離婚に伴う養育費や(法律上の要件に該当する)慰謝料などであり、これらは、再生債権のうち「非減免債権」と呼ばれるものの一種です。

個人再生手続はもともと複雑な手続ですが、中でも養育費や慰謝料の扱いは、さらに分かりづらくなっています。

このコラムでは、個人再生をした時に、離婚後の養育費や慰謝料の支払負担はどうなるのかを解説します。

1.個人再生手続で減額されない債権

個人再生をしても影響を受けず、個人再生手続の外で返済していかなければならないものに、「共益債権」と「一般優先債権」があります。

具体例を挙げると、「共益債権」に当たるものは、裁判所費用や個人再生委員の報酬・水道光熱費、再生手続開始後の養育費などで、「一般優先債権」に当たるものは、税金や保険料といったものになります。

これらは、個人再生をしても免責・減額されず、個人再生手続中においても、手続の外で別途支払わなければなりません(民事再生法121条1項、122条2項)。

もう一つ、前述の非減免債権も、債務自体は減額されません。

具体的には、再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(不法行為の侵害の対象が人の生命・身体である場合は、故意又は重過失によるものであれば足りる)といったものです。

また、再生手続開始前に既に滞納している未払養育費も、非減免債権となり、離婚慰謝料は、その離婚原因(慰謝料の発生原因事実)によっては、非減免債権として扱われます。

もっとも、非減免債権は、再生計画に組み入れられる再生債権の一種ではあるので、一般的な借入債務と同様、裁判所に債権者と債権額を申告しなければならず、また、再生手続中は、手続の外で債権者に返済をすることは出来ません(この点は、共益債権や一般優先債権と異なっています)。

非減免債権の債権者に対する返済は、他の再生債権者に対する返済と同様、再生計画に基づいて行なうことが求められます。

しかし他方で、非減免債権は、その他の一般的な再生債権とは異なり、債務の総額を減額することは認められないものです。

「再生計画に基づいて返済するのに、債務の総額自体は減額されない」ということは、再生計画に基づく返済期間が終了したら、残金は一括で支払わなければならない、ということを意味しています。

2.離婚後の養育費の支払いについて

個人再生手続で減額されない債権について分かったところで、まず、養育費について、個人再生手続によりどのような影響を受けるのかを説明しましょう。

養育費は、個人再生をしても相手に支払うお金の総額が減ることはありません。
養育費は子供が最低限必要な教育などを受けるために必要なものであり、破産法により手厚く保護されているのです。

(1) 滞納していた養育費

再生手続開始決定前に滞納してしまっていた養育費は、「非減免債権」であり、滞納分の支払義務が減額されることはありません。

ですから、滞納した養育費の一部を再生計画に基づいて支払った後は、残額を一括して支払わなければなりません

そのためには、再生計画に基づく支払いとは別に、再生計画の期間中、継続して、将来の一括支払いに備えたお金を積み立てる等の対策が必要です。
(なお、滞納分の養育費を手続中に支払うことは「偏頗弁済」に当たるため、禁止されています。)

(2) 再生手続開始決定後に支払う養育費

再生手続開始決定後に支払う予定の養育費は、「共益債権」なので、再生計画に組み込まれることはなく、再生手続中も、再生計画に基づく返済と並行して別途支払っていく必要があります。

もちろん、再生計画に基づく支払いを終えても、将来の養育費の支払いが免除されることはありません

3.個人再生で離婚慰謝料がどうなるかは原因次第

次に、離婚した場合の慰謝料です。これは、個人再生手続で減額や免除を受けられるのでしょうか。

慰謝料とは、精神的な損害、つまり、心の傷に対する損害賠償請求権です。
個人再生手続における離婚慰謝料の扱いは、どのような原因で相手に心の傷を負わせてしまったか次第で異なってきます。

すなわち、先程ご説明したとおり、損害賠償請求権が非減免債権として扱われるには、生命・身体を害する不法行為の場合は、不法行為者に故意又は重過失があれば足りるのに対し、それ以外の不法行為の場合は、不法行為者が「悪意」であることが要求されます。

「悪意」とは、相手に対する積極的な「害意」を意味するものと解されており、単なる故意よりも認定のハードルが高くなっています。

(1) 性格の不一致や、浮気が原因

このような場合には、生命・身体を害したとは言えないことはもちろん、よほど悪質なものでない限り、配偶者へ積極的に害を加えたとは言えないでしょうから、非減免債権とはなりません。

普通の借金などと同じように、圧縮された額を再生計画に基づいて支払うことにより、残金は免責されることになります。

(2) 暴力によるDVが原因

暴力によるDVが原因で離婚した場合は、配偶者の身体を傷つけてしまっていることも考えられます。
この場合、離婚の慰謝料請求権には、「故意または重過失により人の生命又は身体を害した」場合の損害賠償請求権が含まれることになります。

その場合は、ケガの治療費のみならず、ケガによる精神的損害についての部分も含めて、非減免債権となります。
非減免債権に該当する慰藉料は、再生計画に基づく支払い後に、残金を一括弁済しなければなりません。

(3) 言葉によるDVが原因

DVは、殴る蹴るといった暴力に限りません。言葉の暴力、すなわち暴言もあります。

この場合、生命や身体を害したといえなくても、積極的に相手の心を傷つけたといえますので、離婚の慰謝料には、悪意で相手に害を加えた場合の損害賠償金が含まれることになります。

そのため、こちらも非減免債権となる可能性があるでしょう。

なお、ある慰謝料請求権が非減免債権に当たるのか否か、という問題は、再生手続の中では確定出来ないことであり、もし、非減免債権であることを再生債務者側が争う場合には、通常訴訟で争うことになります。

また、非減免債権であるか否か以前に、慰謝料の金額に争いがある場合は、債権者一覧表の中で異議の留保を行ない、その後、債権者の主張する債権額に対して異議の申述をして争うことになります。

4.個人再生中に離婚した場合の影響

最後に、個人再生中に離婚することになってしまった場合、個人再生に何かしらの影響があるのかどうかを解説します。

(1) 個人再生申し立て中の離婚

個人再生では、裁判所が、申立時に給与明細書や預金通帳の写し、家計収支表などを提出させ、継続した返済が可能かどうかを調べます。

その際、配偶者の収入が家計に計上されていると、離婚によって生活収支が大きく変わってしまうことになり、再生計画の認可を受けられない可能性を含め、個人再生手続の履行可能性に大きく影響します。

(2) 再生計画の支払い中の離婚

再生計画が認可されると、計画に沿って各債権者へ返済をしていくことになりますが、その途中で離婚するということは、申立て中の離婚と同様、再生債務者の家計に大きく影響し、支払いが滞ってしまう恐れが出てきます。

再生計画の実行中に支払いが出来なくなってしまえば、再生計画の取消により、借金が復活してしまうこともあり得ますので、注意が必要です。

(3) 個人再生中の離婚による財産分与

離婚すると、それまで2人で築き上げてきた財産を分配しなければなりません。

個人再生中の離婚では、住宅資金特別条項を利用していると、財産分与が大きな問題となることがあります。

個人再生には、住宅ローンは再生債権に組み入れずにそのまま支払い続けることで、マイホームを手放さないで済むという特例があります。
しかし、これを利用するにはいくつかの要件があり、離婚により状況が変化することで、要件に該当しなくなる可能性があります。

例えば、夫が住宅資金特別条項を利用した個人再生をする際に、財産分与により自分名義のマイホームの所有権を妻に移転すると、夫がマイホームの所有者ではなくなるので住宅資金特別特例の要件から外れ、結局は妻も含めて二人ともマイホームから出ていかなくてはならなくなります。

また、家の所有名義を移転していない場合でも、例えば、離婚の際の合意により、その後、妻だけが家に居住し、再生債務者である夫自身はその家に居住しなくなれば、もはやその家は、再生債務者にとって「住宅」の要件を満たしていないので、やはり住宅資金特別条項を利用することが出来なくなります。

個人再生中の離婚で再生手続きがどうなるかは、個別の事情を基に判断する必要がありますので、一度弁護士にご相談ください。

5.個人再生問題は泉総合法律事務所藤沢支店へ

養育費は、個人再生をしても、支払うべき総額は減ることはありません。また、離婚の慰謝料が非減免債権となれば、滞納していた養育費と同じように、再生計画の支払いを終えた後に、残金を一括で支払う必要が出てきます。

そのための積立の負担が重くなれば、個人再生が失敗する恐れもあります。

非減免債権の返済の関係で、積立金の見通しを立てる、あるいは、再生計画を終えた後の支払いも分割払いにできないか債権者と交渉するなどの対策については、専門家である弁護士に相談して助言を受けることが重要です。

泉総合法律事務所藤沢支店では、個人再生手続の経験が豊富な弁護士が多数在籍しております
藤沢市、茅ケ崎市、鎌倉市、東海道線・小田急江ノ島線沿線にお住まい、お勤めの方で、借金のみならず、養育費や慰謝料の負担にもお困りの皆様のご相談を、弁護士一同お待ちしております。

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