給料が差し押さえられそうになっていたらすぐに自己破産を!
借金の返済ができなくなると、債権者は債務者の給料を差し押さえて、給料の一部を借金返済にあててしまいます。
ただでさえ苦しい家計のなかで、手に入るお金が一気に減ってしまいのですから、一刻も早い債務整理が必要になることがほとんどでしょう。
自己破産をすれば、下手なことをしない限り、税金などを除いた債務を支払わないでよくなります。
それだけでなく、自己破産手続により、債権者による給料差し押さえを回避・解除できるようになることがあります。
ここでは、自己破産と給料の差しさ押えがお互いに及ぼす影響について説明します。
このコラムの目次
1.自己破産の基本
自己破産手続は、支払うことが出来なくなった借金を、ほとんどの財産を債権者に配当する代わりに、裁判所に支払わないでよくしてもらう債務整理手続です。
自己破産により借金が免除されることは「免責」、裁判所が免責を決定することを「免責許可決定」と言います。
自己破産では、内容が異なる2つの種類の手続があります。
給料の差し押さえが、自己破産手続から、いつ、どのような影響を受けるかは、手続のする意により異なってきます。
そこで、まず、簡単に自己破産手続の種類や全体の流れを説明しましょう。
①管財事件
裁判所により「破産管財人」という手続の監督役が選任されます。
破産管財人が選任される場合は、主に、
- 債権者に配当できる財産を債務者が持っている場合
- 債務者が、借金を免除するうえでよくないこと(免責不許可事由)をしている場合
破産管財人は、債務者の財産を管理・売却して債権者に配当する・債務者から不適切に他人に渡された財産を取り戻す・免責不許可事由を調査して、裁判所に報告するなど、様々な仕事をします。
②同時廃止
免責不許可事由も配当できる財産もない場合は、破産管財人を選任せず、各種手続を省略する手続の種類が用意されています。
こちらは、「同時廃止」と呼ばれています。
<自己破産手続きの流れ>
- 受任通知の発送
契約後、弁護士は、債権者に「受任通知」というものを送り、借金の取立を出来ないようにします。- 申立の準備
手続で必要となる資料集め、弁護士費用や手続費用、破産管財人の報酬にあてるお金の積立などを行います。- 手続の申立
裁判所に申立書などの書類や各種資料を提出します。- 手続の開始
申立て後、当日中~1週間ほどして裁判所が手続開始決定をすることで、自己破産手続が始まります。- 手続の内容
管財事件では、破産管財人が、資産の調査と債権者への配当、または免責不許可事由に関する調査を行います。
なお同時廃止では調査・配当手続自体が開始と同時に終了すると決定され、省略されます。- 借金の免除
免責不許可事由がある場合、破産管財人からの報告を受けた裁判所が、債務者に関する事情の全てをもとに、免責するか判断します。たいていは、免責不許可事由があっても、免責してもらえます(裁量免責)。
2.給料の差し押さえ
給料の差し押さえは、債務者の資産に対して債権者が回収を図るうえで、最も用いられる手段です。
債務者の勤務先さえわかっていれば、概ね給料の手取り額の4分の1を安定して回収することが出来るからです。
債権者は、まず給料の差し押さえをして債務者に支払われないようにし、そのうえで勤務先から差し押さえた部分について支払いを受けます。
一方、債務者からすれば、給料を差し押さえられることで、収入が確実に減少するため、自己破産のための弁護士費用や裁判費用などが積み立てにくくなってしまいます。
しかも、受任通知を発送しても、債権者はすでに手に入れていた判決や、新たに訴訟を提起して得た判決に基づいて、債務者の給料を差し押さえることが出来るのです。
3.自己破産手続で差し押さえられた給料が戻ってくる
自己破産手続では、
- 手続が始まったあとは、新しく差し押さえが出来なくなる
- 手続の前に差し押さえられてしまっていても、差し押さえが解除される
など、給料の差し押さえに対抗することが出来ます。
自己破産して借金をこれからなくそうというのに、債権者に勝手に借金を回収させる訳にはいかないからです。
また、「債権者平等の原則」と言って、一部の債権者だけが抜け駆けするようなことは許されないのですが、給料の差し押さえはこのルールにも反します。
手続が始まった時、つまり、裁判所が手続開始決定をしたとき以降は、新しく差し押さえが出来なくなることは、同時廃止と管財事件のどちらでも同じです。
もっとも、差し押さえられている給料が戻ってくるタイミングは異なります。
(1) 管財事件の場合
管財事件では、手続が始まると、破産管財人が給料の差し押さえを取り消す手続をしてくれることがほとんどです。
ですから、管財事件では、手続開始の前に給料を差し押さえられてしまっていても、手続開始の後の給料は、全額を債務者自身が受け取ることが出来るようになります。
なお、差し押さえにより債権者が手に入れている給料が戻ってくるわけではありません。
破産管財人は、差し押さえをした債権者から「一人だけ抜け駆けするなよ。みんなで分けるためのお金だ」と、給料を取り戻して他の債権者に平等に配当してしまうからです。
特定の債権者にだけ優先的に支払いがされることは、「偏頗弁済」という免責不許可事由になっています。
偏頗弁済などで不法に流出した配当されるはずの財産を取り戻す破産管財人の権限は、「否認権」と呼ばれています。
(2) 同時廃止の場合
同時廃止では、手続開始から借金免除が確定するまでの間は、差し押さえられている分の給料を受け取ることはできません。
手続が開始したとき以降の給料からは、差し押さえられている分の給料が債権者に回収されてしまうことは無くなります。
ですが、それまで差し押さえられていたもののまだ債権者が回収していない給料や、それ以降の差し押さえられるはずだった分の給料については、管財事件と違って、すぐに受け取れません。
免責許可決定が確定し、借金が免除されて初めて、差し押さえられている給料が手に入ります。
つまり、同時廃止の場合は、管財事件に比べると、開始決定から免責許可決定までの約3か月分について、差し押さえられた給料を手に入れるのが遅くなってしまうのです。
ちなみに、(1)の最後にちらっと説明しましたが、差し押さえられた給料を債権者が手に入れてしまっている場合は、本来なら偏頗弁済という免責不許可事由になる可能性があるものですから、管財事件になることが原則です。
しかし、差し押さえられている給料や回収された金額が少ないときは、破産管財人を選任するまでもないとして、同時廃止で自己破産をすることが出来ます。
4.給料差し押さえ対策は、迅速な自己破産の申立
結局のところ、給料が差し押さえられる前に自己破産を申立ててしまうことが何よりの解決策です。
給料が差し押さえられてしまっている場合、ほとんどの場合は管財事件での手続となってしまいますから、差し押さえにより減少した給料から、20~50万円の管財人報酬と、30~40万円が相場の弁護士費用を積み立てなければなりません。
受任通知後に訴訟を提起してくる債権者はほとんどいませんが、あまりに長期間自己破産の申立てをしなかった場合には、裁判に打って出る債権者はしばしばいます。
取立が止まったからと言って浪費せず、節約に励んで迅速に積立金を確保して下さい。
出来ることなら、親族などからの援助も利用するとよいでしょう。
もっとも、友人や同僚からの援助は、自己破産を隠して借金をしたのではないか、などと疑われかねず、相手に迷惑をかけかねないので、出来る限り控えてください。新たに借金をすることは論外です。
返す気もないのに借金をしてその借金も含めて帳消しにしようとしたという悪質な行為をしてしまえば、免責されないのはもちろん、罪に問われるおそれすらあります。
5.債務整理は泉総合法律事務所へご相談下さい
管財事件では手続開始決定により差し押さえられていた給料は戻ってきますが、準備のためお金が必要なのは手続が始まる前の申立て以前の段階です。
同時廃止ならば費用負担はかなり軽くなりますが、給料が戻ってくるのは約3か月も遅くなってしまいます。
いずれにせよ、借入先の業者がすぐ差し押さえに来る強硬業者かどうか、管財事件と同時廃止、どちらの手続を申立てるべきか、そもそも手続を決める裁判所はその手続で自己破産することを許してくれるのかと言った、自己破産をはじめとした債務整理に関する実務的・専門的な知識や経験がなければ、債権者の差し押さえが迫った状況で自己破産をするために適切に行動することは非常に難しいでしょう。
借金の返済に行き詰まり、自己破産を検討しているものの、まだ躊躇ってしまっている方は、一刻も早く弁護士にご相談下さい。
給料の差し押さえの弊害を回避するには、迅速な弁護士への依頼が重要です。
泉総合法律事務所では、これまで多数の借金問題でお困りの方々を、自己破産手続をはじめとした債務整理手続で救ってきた豊富な実績があります。
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