空き巣は窃盗罪!逮捕・勾留はされるのか?
明日の生活もままならないほどにお金に困っていた時、戸締りの緩い留守の家の前を通りかかったら、つい魔が差して侵入し財物を盗んでしまった、ということがあるかもしれません。
このような行為は通称「空き巣」と言いますが、空き巣を犯したら一体何罪になるのでしょうか?
罪に問われてしまうのは当然ですが、今後の自分の身はどうなってしまうのか、心配になる方も多いと思います。
以下においては、空き巣は何罪になるのか、空き巣の量刑はどのように決まるのか、空き巣ではどのような弁護活動をしてもらえるのかなどについて、説明することとします。
このコラムの目次
1.空き巣とは
(1) 空き巣は何罪?
「空き巣」は、家人がいない留守を狙って家屋内に侵入し、他人の財物を盗み取るものです。
他人の財物を盗み取るのは、窃盗罪に当たりますから(刑法235条)、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
そして、家屋内に侵入するのは、住居侵入罪に当たります(刑法130条前段)。
住居侵入罪と窃盗罪は、牽連犯の関係に立ちますから、重い窃盗罪の刑で処断されます(刑法54条1項後段)。
今回の場合は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられます。
(2) 空き巣の情状
空き巣は、窃盗罪の一態様ですので、その量刑も、基本的には窃盗罪一般の考え方にしたがって決まってきます。
窃盗罪に関する量刑の一般的な考え方は、犯罪事実そのものの情状を最も重視し、次いで、前科前歴の有無とその内容、被害回復(弁償)の有無、反省・更生の意欲と社会復帰後の保護環境などを考慮するというものです。
「犯罪事実そのものの情状」とは、被害額、その動機、犯行の方法・態様、計画性の有無、犯行準備の状況、常習性の有無ということになります。
たとえば、いわゆる盗みの七つ道具を携行しての犯行は、常習性があるということになるでしょう。
(3) 空き巣の量刑
窃盗罪は、起訴された場合でも、執行猶予や罰金で終わるケースも多いです。
では、空き巣の場合は、どうなのでしょう。
空き巣では、被害者の立場を軽視することはできません。
被害者からすれば、留守の隙をついて自宅内に不法に侵入され、金銭等の財産を盗まれたわけですから、その憤りの強さや不安感には計り知れないものがあります。
以上のような前提に立って、改めて空き巣の量刑について考えてみますと、空き巣の中でも、どちらかというと悪質性が小さいと考えられている、偶発的な犯行・出来心による犯行・あるいは魔がさしての犯行で、前科前歴がなく(初犯)、定職に就くなど生活の安定性もあり、家族の監督などの保護環境も整っている場合には、被害回復(弁償)がなされれば、社会内での更生が重視されて、不起訴あるいは罰金の可能性が高いといえましょう。
また、上記のような悪質性が小さい空き巣で、窃盗以外の前科はあるものの、窃盗の前科前歴がない場合には、被害回復(弁償)がなされれば、社会復帰後の更生の可能性いかんによって、罰金あるいは執行猶予、法律上実刑が免れないとしても相応の刑期の軽減という量刑判断が下される可能性があります。
上記以外の空き巣の場合(空き巣が複数回の場合も含まれます)には、前科(特に同種前科)の有無と被害回復(弁償)の有無が、実刑か執行猶予を分けたり、刑期の軽減を左右したりすることになるでしょう。
2.空き巣の弁護活動
(1) 被害弁償
空き巣の場合には、被害者に財産的損害(被害)を与えるわけですから、被疑者の処分結果に最も影響するのが、その被害が回復されたどうかということになります。
被害が回復されたといえるためには、被害金品が被害者に返還される(全部の回復又は一部の回復)か、その被害に相当する金額が弁償されなければなりません。
しかし、被害者によっては、盗まれた被害品ということから、その返還を拒否したり、難色を示されたりすることがあるのも事実です。
そのような場合には、時の経過により、被害者の態度が軟化するのを待ち、捜査機関の感触を手掛かりに、被害者と折衝せざるをえないこともあります。
どうしても被害品の返還が無理なら、被害品相当の金額を弁償せざるをえません。
(2) 被害者との示談
空き巣の場合には、被疑者が被害者の住所・氏名を知っている場合もありますが、そのような場合であっても、被害者の心情に思いを致せば、被害金品の返還であれ、被害弁償であれ、被疑者あるいはその家族が被害者と直接接触をもつことは避けなければなりません。
したがって、被害者との折衝、そして示談交渉などは、法律のプロである弁護士に委ねるのが望ましいことになります。
弁護士としては、捜査機関を介して、被害者に対し示談交渉に応じる意思があるかどうかを打診してもらい、その了解が得られれば、直接会って、示談や被害弁償の交渉をすることになります。
弁護士の尽力により、被疑者の反省と謝罪の気持ちが被害者に伝わり、示談が成立した場合には、示談書の中に、被疑者を宥恕する(許す)文言を条項として入れてもらいます。
他方で、被害者が被疑者を宥恕する気持ちにはなれないものの、被害弁償は受け入れてくれるという場合もあります。
(3) 釈放に向けての活動
悪質性が小さいと考えられ、定職についており、家族の監督があるなどの保護環境も整い、窃盗の前科前歴がない場合は、被害回復(弁償)がなされていれば、罪証隠滅・逃亡のおそれはないものと評価され、原則的には、逮捕、そして勾留となる可能性は低いでしょう。
逆に、上記のような悪質性が小さいケースでも、被害回復(弁償)がなされなければ、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれが考慮されることから、逮捕、そして勾留される可能性があります。
そうしますと、やはり被害回復(弁償)が何よりも重要なことになってきます。
被害回復(弁償)が、逮捕前になされたのであれば逮捕はされないでしょうし、逮捕中になされたのであれば、捜査機関側は、被疑者を任意に釈放することになるでしょう。
また、検察官から勾留の請求があっても、被害回復(弁償)がなされていれば、裁判官は、勾留請求を却下するものといえます。
勾留中に被害回復(弁償)がなされたのであれば、検察官は、被疑者を任意に釈放するでしょう。
検察官が釈放しない場合でも、弁護士から勾留取消請求があれば、裁判官は、勾留を取り消すことが考えられます。
悪質性がある空き巣の場合は、被害回復(弁償)の有無にかかわらず、逮捕、そして勾留されることがあります。
被害回復(弁償)については、弁護士の尽力に負うところが大きいです。
そして、被害回復(弁償)が早ければ早いほど、被疑者に有利な結果となります。
(4) 公判段階での活動
身柄拘束(勾留)のまま起訴されたとしても、被害回復(弁償)がなされれば、罪証隠滅のおそれはないものといえますし、刑訴法89条の権利保釈の除外事由があればともかく、仮に逃亡のおそれがある場合でも、保釈保証金の納付によって防止することができますので、一般的には、保釈が認められるといえましょう。
また、公判請求された場合、実刑か執行猶予か、また保護観察付執行猶予となるか、仮に法律上実刑が免れないとしてもその刑期が軽減されるかは、被害回復(弁償)がなされているか否かによって、大きく左右されることになります。
3.まとめ
ご自分が空き巣を犯してしまった、また発覚して逮捕されてしまった場合、その後、どうなってしまうのかと心配になると思います。
そのような場合、お早めに泉総合法律事務所にご相談ください。刑事弁護に精通した弁護士が適切にアドバイスいたします。
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