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自己破産をすると引っ越しはできないのか?

自己破産をすると引越しはできないのか?

「自己破産をすると○○ができなくなると聞いた」という心配事を抱えて泉総合法律事務所に相談に来られる方は決して珍しくありません。

もっとも、実際に自己破産をした場合に制限を受けることもあれば、全くの噂にすぎないこともあります。

中でも、比較的よく出てくる質問の1つが「自己破産をすると引っ越しはできないのですか」です。

「自己破産をすると引っ越しができなくなるのか」という問いに対する答えですが、これは「引っ越しができなくなるわけではないが、自己破産手続き中は、一定の場合に裁判所の許可が必要になる」というのが答えになります。

今回は、自己破産の手続き中や自己破産後に引っ越し(転居)ができるケースとできないケース・そして旅行の可否について解説します。

1.自己破産手続中の引っ越し

(1) 破産法の記載

破産者(自己破産手続中の者)の引っ越しに関しては、破産法において以下のように定められています。

破産法第37条1項 
破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。

そして、この規定に違反した場合、免責不許可事由となります(下記条文)。

破産法252条1項11号
裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
十一 第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。

つまり、自己破産手続き中の裁判所の許可を得ない引っ越しは、破産法で定められた破産者の義務に違反するので、免責(借金が0になること)が許可されない可能性が出てくるわけです。

なお、破産法37条1項の条文は「居住地を離れること」と書いてありますので、文字通り解釈すれば短期の旅行でも裁判所の許可が必要にも思えます。

これについては、後の3.において詳しく説明をします。

(2) 制限が及ぶのは管財事件のみ

ここまでの説明だと「破産手続き中の引っ越しはリスクが高いのでは」「転勤が定期的にある仕事なので引っ越しすることにリスクがあるなら自己破産ができない」と心配される方もいるかもしれません。
しかし、そこまで深刻にとらえなければならないものでもありません。

まず、破産法第37条1項の規定が及ぶのは自己破産手続きの中でも「管財事件」に限られます。

自己破産手続きには、管財事件よりも簡易な同時廃止事件がありますが、この同時廃止事件で進むことになった場合には、破産法第37条1項の規定は及びません。

管財事件は同時廃止事件よりも手続きが複雑で長期に及ぶため、破産者が勝手に引っ越し等を行うことにより指定の住所に郵便物が届かなくなる等、音信不通になってしまう事態を防ぐ必要があります。

そのため、手続きが簡易ですぐに終わる同時廃止事件の場合は、引っ越すに当たり裁判所の許可は必要ありません(免責の決定が出る前であれば「引っ越した事実」は裁判所へ報告します)。

自己破産の多くは同時廃止事件で処理されているので、そもそも手続き中の引っ越しの制限について留意しなければならない方は限定的でしょう。

自己破産の管財事件と同時廃止の違いについて弁護士が解説

[参考記事]

自己破産の管財事件と同時廃止の違いとは

(3) 引っ越しの許可を得るのは簡易

次に、引っ越しの許可を得るための手続ですが、基本的に煩雑な手続きではありません。

引っ越しすることが決まりましたら「引っ越しする前に」申立代理人に連絡すれば、申立代理人が書類を作成します。

申立代理人は破産管財人(管財事件において裁判所に専任された人)の同意を得た上で裁判所に許可を求めます。

引っ越しに関して特に手続き上問題となる点が無ければ、破産管財人は速やかに同意してくれますし、裁判所も短期間で許可を出してくれます(後日、引っ越し後の住民票の提出は必要になります)。

「転勤を命じられた」「家賃の安い公営住宅に住めることになった」等、もっともな理由があれば特に問題なく裁判所の許可が出ることが原則です。

【裁判所の許可を得ずに引っ越してしまったケース】
では、うっかり裁判所の許可を得ずに引っ越しをしてしまった場合はどうなるのでしょうか。
既に述べた通り、これにより免責が許可されない可能性はあります。ただし、本当にうっかり許可を得ることを忘れていただけなのであれば、申立代理人に直ちに報告し、申立代理人が破産管財人の同意を得て裁判所に申請をすれば、大事にならないことも少なくありません。
もっとも、悪質なケースはこの限りではありません。

2.自己破産後の引っ越し

自己破産後は、引っ越しや移動について自由です。
自己破産をすることによって引っ越しができなくなるということも、大家さんから今の家を追い出されてしまうということもないでしょう(しかし、長期に渡って家賃を滞納している場合は注意が必要です)。

しかし、新たな物件の入居審査を受ける際、そこの保証会社が信販系である場合には注意が必要です。

自己破産をすると、金融事故を起こしたという情報が信用情報機関に登録されます(いわゆるブラックリスト入り)。
信販系保証会社は、入居審査の際にその信用情報機関を参照しますが、支払い能力に問題があると判断されれば審査に通してもらうことができません。

結果として、信販系保証会社の入居審査に通らず、入居が許可されない(引っ越しができない)という可能性はあります。

自己破産後に引っ越しをする際には、不動産会社などに、該当の住居が信販系保証会社かどうかを確認すると良いでしょう。

3.引っ越し以外の移動(旅行)

ここまでは引っ越しに関して述べてきましたが、同様の問題として「旅行」はどうなのか?という疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

破産法37条1項の条文は「居住地を離れること」と書いてありますが、これは海外旅行や短期の国内旅行にも範囲が及ぶのでしょうか?

裁判所や管財人の判断によって異なるところはありますが、一般的には日帰りや短期の国内旅行にまで裁判所の許可は必要としない傾向にあります。

しかし、国内旅行であっても長期にわたる場合や海外旅行では一般的に裁判所の許可が必要とされます。

これも、破産者が音信不通となり、手続きに滞りが生じることを防ぐ目的があります。

4.自己破産は弁護士にご相談ください

自己破産手続きを進める場合、やはり破産者にはいくつかの制約が課されることになります。
「お金・財産(資産)は全部処分・配当されるの?」「クレジットカードが使えなくなると聞いた」「自己破産後は結婚できないのでは」「保証人に迷惑がかかるだろう」など、様々な不安を持つ方がいらっしゃるでしょう。

しかし、実際には、大きな不安を抱かなければならないような制約というものはほとんどありません。

一人で不安を抱え込むよりも、弁護士に直接質問をしてみることをお勧めします。
自己破産などの借金問題については、是非一度、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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